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14
彼はただ私のそばにいた。
肩も抱かない。背中も頭も撫でない。
ただ黙って、私の隣に。
そして唐突に、声を出した。
「あっ流れ星」
「えっ」
思わず、顔を上げる。
「願い事するヒマもねえな」
ぽかんと上を見たまま呟く。
確かに彼は見たのだろう。
えー、と私は気が抜けたように笑った。
顔の筋肉を動かすと、泣き腫らした目も痛い。
……けど今日初めて、私は笑ったかもしれない。
願い事か、と考える。
非常階段のジグザグに、夜空が切り取られている。
空というより破れ目のようだ。
手のひらに収まりそうなほど小さいのに、手の届くものは一つも無い。
見上げていると、吸い込まれていきそうな気がした。
私達の頭上に降り注いでほしい、と思った。
流星の雨。
大気圏を突破してなお燃え続ける彗星。
それってもう隕石じゃん。
できるだけ鮮明にイメージし、私は目を閉じる。
少し眠くなってきたかもしれない。
きっともうすぐ日付が変わる。
(了)
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