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真剣にやってればこんなミスはしないんだ、と叫んで母は97点の答案をぐしゃりと掴み、その拳骨で私の頬を殴った。
ゴリ、という鈍い音が顔の内部でした。
私は床に倒れ込んだ。
睨み付けてはいけないのは分かっていた。母の目を見てはいけない。
けど、反射的に向いてしまった。
その目付きにお前の心の醜さが表れてるんだよ。
……最後の方は何を言っているのか分からない。
うるるるぁ、と獣のような声を絞り出し、私の髪の毛を掴み、身体ごと床に引き倒した。
こういう時、私はいつも受身を取ってしまう。
やられると分かった途端、はね除けるなりかわすなりすればいいものを。
もう私の体格は母と変わらないのだから、取っ組み合いだってできるはず。
なのに、幼い頃からの刷り込みで、今でも母の体は影が膨れ上がったように大きく見える。
ごめんなさい、もう間違えないから、痛いよお母さんお願いやめて、とわめきながら、私は限界まで引っ張られた頭皮の痛みに耐えきれず、母の足首を掴んだ。
もはや完全な獣になってしまった母は、全ての抵抗に怒り狂う。
私は腕を蹴り飛ばされ、痛みのあまりうめき声を上げた。
思わず手を離した瞬間、上からやばい空気の動きを感じた。
見上げると、鬼のように引きつった顔の、目だけが冷徹に光っていた。
両目の焦点は私の下腹部に結んでいる。
破裂のイメージがスパークし、私はダンゴムシのように身体を丸めた。
渾身のキックは右膝に炸裂した。
骨から突き上げられるような声が出た。
しばらく動けなかった。
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