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橋を渡り終えた先は、昼間とは別世界だった。
土手を下りて辺りを見渡すと、あまりの暗さに背筋が冷えた。
街灯が極端に少ないのだと気付く。
何度も来たことがあるはずなのに。
この道はこんなに細かっただろうか。
少し歩くと坂になる。郵便局のところで三叉路になっている。
誰ともすれ違わない。車も通らない。
もちろん人は住んでいる。あそこのアパートにだって明かりはついているんだし。
……それでも、知っているものは何も無い気がした。
郵便局は閉まっていた。
当たり前だ。もう十一時を過ぎているはず。
家を出た瞬間からスマホの電源は切っていた。
位置がばれても、母が追って来ないことは分かっている。
把握されること。ただそれだけが嫌だった。
外へ。遠くへ。
痛みより大きなベクトルが、私を動かしていた。
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