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 ダッダッダッと異様な足音が、向こうから急速に近付いてきた。  私はビクッと顔を上げ、足を止めた。  仄暗い路地の一角から、真っ黒なシルエットが飛び出した。  すごい速度でこっちに走ってくる。  少年だった。  私と同じくらいの年、背格好。  一度斜め後ろを振り返り、更に速度を上げた。  明らかに何かから逃げている。  追っ手の姿は見えてこない。  あっという間に私の横を通り過ぎる。  その直前、目が合った。  見開き、私の顔を明確に捉えたという表情をした。  まるでどこかで会ったことがあると言わんばかりに。
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