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「とりあえずミツキはさー、誤解されやすいんだよ。それをわかってくれて気に入ってくれただけで感謝しろよ」
今度は水をゴクゴクと喉を鳴らしながら飲み、ガツンとトレイに置いた。
リョウは、横目に朔良を見ながら、過ごしてきた日々を思い出す。
いつも頬杖をついて、何かを考えているようで、結局それを口には殆ど出さない。何を考えているか分からなくて。でも話すと、しっかりと思考していて、それを早く言えと何度も怒ったことがある。
「なんだよ……」
「別に……ミツキをわかってくれる奴いねぇかなぁー?」
そう言いながら、リョウは大きく伸びをした。
食べ終えたラーメンを返却口に片付けて、学食を出た。大学の広い中庭。高い太陽が、ジリジリと肌を焼き付ける。
「あっちぃなぁ」
吹き出した汗を拭くリョウの背中は、いつも、大きく見えた。昔から、自分の前を歩いて、引っ張って、そして周りに人を寄せ集めて。
それぞれに彼女ができたり、別のカテゴリーの友達ができたり、それでもたまにはこうして飯を食べて、いつも一緒にいるわけではないからこその、心地よさがあるような気がする。
そんなことを考えながら朔良は、遠くの雲を眺めた。
「あー! リョウくん! ミツキくん!」
前からぶんぶん手を振って走ってきたのは、噂をしていたサクラ。出会った頃より少し伸びた髪をなびかせて、反応の薄いふたりを気にも留めず、キラッキラと瞳を輝かせている。
そのキラキラした瞳は、リョウに向けられているものだと、さっきまでの朔良なら思っていただろう。そうじゃないかもしれないという自惚のような感覚に朔良は、なぜかゾワゾワと嫌な感覚が走った。それはサクラへの嫌悪感ではなくて、自惚れそうな自分への、苛立ち。
*
自惚れてしまえばいいのに。
感情に流されてしまえばいいのに。
そう思う自分を徹底的に潰してしまう、自分の理性。
こんな自分をどうしても俺は、好きになれない。
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