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あっちの世界ー〆〆〆×朔良ー
「あれ、斗真くんもいるんすか?」
指定された場所は、都内にある撮影スタジオ。そこは廃墟のような場所で、朔良はゴクリと唾を飲んだ。そこへ現れたのが、斗真だった。
「やっぱり今日は朔良だったか……」
「え、知らなかったんすか」
斗真は手を上げ笑った。
『あっちのスタッフ』と呼ばれた人たちは、廃墟を忙しなく動く。そんな人の動きを眺めていた朔良に、スタッフのひとりがツカツカと近寄り話しかけた。
「君か、名前なんだっけ……」
「朔良や。モデルの名前くらい覚えとけや、JIN」
「ごめんごめん、斗真相変わらずだねぇ。撮影スタイルちょっとまたそちらとは違うから頑張ってな」
JINと呼ばれた男は、朔良の肩にポンと手を置き、そしてまた忙しない動きへと戻っていった。穏やかな口調のスタッフに対する斗真の敵意を露わにした姿に、朔良は一瞬慄いた。
「斗真くんどうしたんすか」
「いや……朔良、今日キツイと思うねんや、限界がきたら言うんやで」
肩にポンと置かれた斗真の手から、温もりが伝わる。
「ふたりとも、楽屋こっちやでぇ」
先に到着していたKANに手招きされ、朔良と斗真は楽屋へと案内される。廃墟のその場所とは違い、楽屋とされた場所は小綺麗で、それぞれシャワーを浴びた後鏡に向かい髪をセットし、下着を履き替え、そして衣装に着替えた。
いつもペラペラ話し続け陽気な声を響かせるKANの声が、聞こえない。
いつもとは何かが違う。
そう感じて朔良は、頬を強張らせた。
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