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何かが鳴っている。
(そういえば、スヌーズかけたっけ?あれ?あれ?)
グワッバ!!
布団を跳ね除け、私は鳴り続けるスマホを鷲掴みにし相手を確認する。
電話を掛けて来たのは恋人の由弥だった。
「ごめんなさい、寝坊した。」
『へー』
電話の向こうから不機嫌そうな声が聞こえる。
そりゃあそうでしょう。
時計を見れば、待ち合わせの時間を2分ほど過ぎていた。
普段早目に着いている私が来ないから、時間が来て直ぐに電話をしたのだろう。
「ごめんなさい、これから支度だから時間かかる」
『フーン。他人の遅刻に煩いくせに、自分が遅れるのは良いんだな』
「良いなんて思ってないよ。悪いと思ってる。ごめんなさい」
不機嫌極まりない声に、必死で謝りながらベッドから降りた。
『取り敢えず、5分で来い』
「は?無理」
何言ってるの?5分じゃ家を出る準備すらまま成らない。どうやって隣町の海岸まで移動しろと!
『無理ってなんだよ。やりもしないで無理って言うな』
「やらなくても無理って分かることだし・・」
『いいから来い、でも5分待って来なかったら俺は帰るからな』
私は私室のドアを開けるのを止め、ベットに腰掛けた。
「うん、ごめんね。これ以上待たなくて良いから今日は帰って」
『はあ?お前何言ってんの?人を待たせて置いて、ちゃんと誤りもしないで帰れって何!』
あまりの大声に電話を耳から離す。
「由弥、あのね。さっきからチャントごめんなさいって謝ってるよね。寝坊も遅刻も私が悪いことは分かっているの。だからこれ以上待たせるのは申し訳ないから、今日は帰って欲しいの」
付き合い始めてまだ5ヶ月だから、自分の気持ちはハッキリ伝えないときっと解り合えない。そう思うから、落ち着いて心情を理解してもらえるように説明する。
『あのさあ、何で電話でごめんなさいが謝ったことになるの?』
スマホの受話器からわざとらしい『はぁ~』というため息が聞こえて来る。
そしてトーンをお怒りモードに戻した由弥は、
『謝るっていうのは、電話じゃなくてさ、ちゃんと顔を合わせて言うもんだろ。それに、謝ってもらったかどうかは、こっちが決めることなんだぞ。何勝手に謝ったことにして終わった気になってるんだよ。いいから早く支度して来いよ』
と、宣った。
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