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頭の中で理性を脳に留め付けている螺子がクルクルと回転を始めた。
「うん、落ち着いて聞いて。」
『はっ!俺は落ち着いてるし、何でお前が命令してくんの?寝坊して俺を待たせてるのはお前だよな』
「さっきから、お前って何?」
由弥の勢いが止まる。
『何って・・・』
「寝坊も遅刻も私が悪い。だからって何でいきなりお前呼びなの?昨夜は普通に名前で呼んでたのに、私が悪いと分かると嵩にかかってお前呼びするんだ」
ベットから床に下ろしていた足を持ち上げ胡座組むと、頭の螺子がキュルキュルと音を立てて回転速度を上げてゆく気がした。
「私があなたの遅刻にいちいち電話をして、急かしたり咎めたり、謝罪の要求なんてしたこと無いよね。
そもそも殆ど毎回遅れて来る人が、たった一回それも1・2分の遅刻で電話して来て、何偉そうにお前呼びしてんのよ」
『いっ、1・2分じゃないだろ!寝坊してまだ家に居るクセして!!』
「私が寝坊したって分かったのは電話に出てからでしょ。寝坊がわかる前に急かすために電話したんでしょう。それで寝坊って分かったらお前呼びで5分で来いなんて無茶苦茶言って来たんじゃない」
あゝ、螺子が吹っ飛んでゆく動画が脳内で絶賛上映中だ。
もうイイや。面倒臭い奴は嫌いだ。
「そもそも私が寝坊したのは、あなたが昨夜遅くにメッセ投げて来て『手作りパンのサンドイッチ作って来て』って言い出したからでしょう。
メッセが来てからパン焼きながら具材作って、寝るのが3時回ったからでしょうが」
『イヤ、だって、パンは慣れると簡単だって言ってたろ・・・』
急にオロ付き出した由弥に
「慣れると簡単ていうのは失敗いないっていう意味。捏ねやら発酵やら焼きやらで時間は掛かるの。焼けても冷めてからじゃないとしまえないし具も挟めないからって、昨夜メッセで説明したよね。
それでも私の焼いたパンのサンドイッチが食べたいって、言い張ったのはあなたでしょ」
『そんなに嫌なら作らなきゃよかっただろ!
最終的に作るって決めたのはお前だろ!』
「メッセで30分以上説明しても諦めてくれなくて、しつこく粘った分からず屋がよく言うよね」
もうね、上映会は満員御礼の螺子飛び放題。理性どころか、人情の螺子まで大盤振る舞いで跳ね飛んで行く。
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