清廉潔白な乙女

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 話によると、七夕に関する都市伝説のようだった。元々、七夕とは日本古来の禊行事で、村で選ばれた清廉潔白そうな乙女が棚機(たなばた)という織り機で神の為に着物を織り、秋の豊作や人々の穢れを祓うものだったという。で、俺の住む地域にある御笠山は、その乙女が着物を供えにくる所で、奥にはまだ剥げた鳥居が残っているらしい。  真っ白な鳥居。  そこで、七夕の夜に〝清廉潔白〟と三つ唱えると、乙女が穢れを祓ってくれる。  過去に犯した罪が、なかったことになる。  馬鹿げた都市伝説。誰がそんなことを吹聴し始めたのか。そう言って笑って済ませても良かった。けど、俺は願わずにはいられなかった。縋りたくなった。そんな、嘘か本当かも分からない話に。
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