序章

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序章

「これでLTを終わります。さようなら」 「さようならー」 やっと終わったか。はぁ、と息を吐く。さっさと帰ろ。あと5分が長かったな。 無造作にスクールバッグを掴んで教室を出る。 昇降口でぼろぼろのローファーを履く。一緒に帰る人何ていない。友達だって一人もいないのだから。高校三年生・七海(ななみ)時乃(しの)は俗に言う『ぼっち』を貫き通してきた。 別に寂しくも何ともない。一人の方が逆に落ち着くのだ...何て強がってみる。本当はみんなでいるのが怖いのだ。 外はあいにくの雨だった。傘立てからフリルのついた白の傘をつまみ出す。中学から使っているお気に入りである。 傘をさして歩き出す。アスファルトに降った雨は染み込む前に車にはねられていた。それをぼーっと見つめる。 「ねぇ、ねぇちょっと。そこの女子高生」 不意にどこからか声をかけられる。驚いて辺りを見回すが、誰もいない。 え...誰もいない?私の気のせい? 狐につままれた顔をして、時乃はまた歩を進めた。 「ちょっとー!肩よ肩!この視野狭女子高生!」 「え?...ひゃっ!!」 肩を触ると何かある。思わず掴んで顔の前まで持ってきてしまった。 「痛い痛い!!頭を掴まないで!!鬼!!ドS!!」 私が掴んでいたのは驚くべきことに小さな人間だった。透き通り、水色が少しかかった羽をバタつかせている。 もしかして...妖精?いやいや、そんなわけない。この世界に妖精だなんて... 「自己紹介します。私はフィリフェ。妖精よ」
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