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* * *
フィリフェを鞄の中に押し込み、お母さんにバレないように自室まで駆け上がる。
ベッドに鞄を置くと、ファスナーを開けた。
「時乃の鞄の中暑い~」
もぞもぞと這い出て来たフィリフェは手をぱたぱた仰ぐ。
「しょうがないでしょ。お母さんにバレるよりまし。体操服とか洗濯機にいれてくるからゆっくりしてて」
そう言って部屋を出て行こうとした時、違和感を覚えた。
あれ...?フィリフェ、さっき私のこと何て呼んだ?
「フィリフェ、何て言った?」
「は?鞄の中暑いって...」
「違う違う。私のこと何て呼んだ?」
「何?自分の名前分からなくなった?時乃って言ったのよ」
!?
何か勘違いされてるー!?
「ちょっ、私の名前は時乃だよ!?」
「え?」
フィリフェはポカンと口を開ける。
え...私ずっと名前勘違いされてたの?
名前勘違い事件のせいで、話題の振りにくい微妙な空気が流れる。
暫しの沈黙の後、その空気を破ったのはフィリフェだった。
「ちょ、ちょっと早く用事済ませてきなさいよ。私の素晴らしい能力をお披露目するんだから。名前間違えられたくらいで突っ立ってんじゃないわよ」
秒速で開き直ったぞこの妖精。
私は少し睨むと自室を出た。
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