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フィリフェの元気な声と同時に部屋全体がパレードのようにキラキラと輝く。
「うわあっ!!何これ!?」
突然のことにペンの動きが止まった。
落ちそうになった消しゴムを拾い上げ、説明が欲しいとフィリフェの方を向く。
「何?後で説明するから今は勉強お勉強!」
私の視線に気づいたフィリフェがニカッと白い歯を覗かせる。
だがその笑顔に私は怒りしか湧いてこない。
勉強する私の気持ちにもなってみてよ...はぁ...まぁいいや。今はやろう。
キュ、とペンを持ち直した。
...カリカリ、カリカリ。
静まり返った部屋には字を書く音だけが響く。
よし...基礎問題は全部解けたかな...。
数学の1ページのうち半分を解き終えると、フィリフェの声が聞こえた。
「残り三十秒~!!」
えっ?
驚きにまたペンが止まる。
え、嘘....?まだ基礎しか解いてないのに...。え、基礎にそんなにかかったの?嘘でしょ?
私はすっかり混乱してしまった。
そして、そのまま応用問題もろくに解けないまま、時間が過ぎた。
「3、2、1、終了~!」
私は唖然としてペンを置く。
待って...これは現実...?
正答数何てどうでもよかった。今はそれよりも基礎に五分もかかったことがショックだった。
これが癖になって続いたら、学校のテストの順位がキープ出来ない...。
「さぁさぁ、いかがでした?」
そんな私の気持ちを知ってか知らずかフィリフェが早速感想を聞いてくる。
だが、私は感想に答える気にもなれなかった。
前回、一位だったのに...これじゃあ下がっちゃう...。
私はガックリと肩を落とした。
「あー...何かショック受けてる感じ?ま、次の五分頑張ろ!」
何だろう、応援されてる筈なのに腹が立つ。
ふぅ、とため息を吐きながら違う教科の問題集を棚から引っ張り出した。さっきの数学の問題集はさっきのショックをなかったことにするように強引に押し込む。
おっ...日本史だ。
たまたま取り出した問題集のタイトルを見て小さくガッツポーズをする。
日本史は時乃が一番得意とする教科だった。
日本史なら...五分で1ページくらい...大丈夫!...な筈...。
普段だったら自信満々に宣言出来ることも今は弱々しく予防線を張ることしか出来なかった。
「では、次の五分いくわよー!準備してー!」
フィリフェはもうそこにあるのかも怪しい小さいストップウォッチのボタンを押している。
私はシャーペンの芯の長さを確認した。
今度は、さっきよりも解けるように...めんどくさい問題は後に回して...とにかく解く問題の数を増やそう...。
何度も頭の中でシミュレーションをする。
大丈夫...大丈夫...。
崖に追い込まれた弱いヒーローのような気分を無理矢理自信に変えようと、「大丈夫」という信頼出来るかも分からない言葉を心の中で唱える。
「準備はいいかしら?よーい、スタート!!」
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