序章

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腹を空かせた肉食動物のように問題集へ飛びついた。 カリカリカリ、カリカリカリ。 さっきの何倍もの速さでシャーペンが踊る音が耳に入る。 えっと、これはこの年にあった出来事だから...これだ。そして...これはこの人が起こした一揆だよね...。 頭の中で整理しながら一問一問確実に解いていく。焦りのせいで途中から字が崩れ始める。書き直したい気持ちをググッとこらえて問題を解き進めた。 よし...!1ページ終了!この調子で...! 丸つけ何て後回し。答えを机の隅に押しやって次のページに取りかかった。 カリカリカリカリ、カリカリカリカリ。 もうおかしくなりそうだった。いつまでも一定の音程で響くシャーペンの芯の音。限界を迎えた手首はぴりぴり、びりびり痺れて感覚を失っている。 それでも私は書くことをやめなかった。さっきの数学が相当ショックであるのと同時にすごく悔しかったのだ。 あぁ手首がぁ...! 流石に手首がもうダメだとスピードダウンをしてくる。どれだけ早く動かそうとしても手首が従順に私の脳の指令に従うことはなかった。 せめて...最後のこの問題だけ...! ボロボロの戦士になった気分になる。まぁ私の手首はボロボロだからあながち間違ってないだろう、と思う。 問題を解き終えて、コトンとペンを置く。 酷使した手首を慰めほぐしながらフィリフェに残り時間の状況を確認した。 まぁでも、残り十五秒くらいかな...2ページも解いたわけだし。 「フィリフェ、残り時間は? 」 「後一分ね。」 そっか。後一分。まだ半ページくらいは解けるかな...ってええええええええぇ!? 衝撃的過ぎる事実にバラエティー番組でよく見るようなボケを一人でやってしまった。 きれいにフィリフェを二度見する。 フィリフェは何も言わずにニコニコしている。 何なの...これは私の成長?この短時間で?気持ち悪過ぎでしょ。 さあーっと血の気が引く。自分のことに対してこんなに背筋が冷たくなったのは初めてだった。そりゃそうだ。こんな経験日常でするわけがない。 「私の能力の素晴らしさが分かったみたいね!まだちょっとだけ時間が残ってるけど、ここで切るわ」 ボタンを一回押してポケットにストップウォッチをしまったフィリフェは、ベッドの掛け布団に腰かける。 私もそれに続いてフィリフェの隣に座った。並んで座った時のこのちょっぴり温かい気持ちに懐かしさを覚える。 あぁ...親友と公園のベンチに腰かけて喋ったなー...。今となっては遠い思い出でしかないけど。...まぁいいの、こんなことは忘れておけば...。 記憶を忘れる儀式のように頭をフルフル振ると、フィリフェに向き直り疑問をぶつける。 「ちょっと、何かおかしいの。数学と日本史のやる量が歴然として違った!どういうこと?それがフィリフェの能力なの?」 「まぁ待ちなさいよ。一つずつ説明するから。...まずはそれぞれの五分にどんな効力のあるマジックをかけたのか、からね」
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