6人が本棚に入れています
本棚に追加
序章
「これでLTを終わります。さようなら」
「さようならー」
やっと終わったか。はぁ、と息を吐く。さっさと帰ろ。あと5分が長かったな。
無造作にスクールバッグを掴んで教室を出る。
昇降口でぼろぼろのローファーを履く。一緒に帰る人何ていない。友達だって一人もいないのだから。高校三年生・七海時乃は俗に言う『ぼっち』を貫き通してきた。
別に寂しくも何ともない。一人の方が逆に落ち着くのだ...何て強がってみる。本当はみんなでいるのが怖いのだ。
外はあいにくの雨だった。傘立てからフリルのついた白の傘をつまみ出す。中学から使っているお気に入りである。
傘をさして歩き出す。アスファルトに降った雨は染み込む前に車にはねられていた。それをぼーっと見つめる。
「ねぇ、ねぇちょっと。そこの女子高生」
不意にどこからか声をかけられる。驚いて辺りを見回すが、誰もいない。
え...誰もいない?私の気のせい?
狐につままれた顔をして、時乃はまた歩を進めた。
「ちょっとー!肩よ肩!この視野狭女子高生!」
「え?...ひゃっ!!」
肩を触ると何かある。思わず掴んで顔の前まで持ってきてしまった。
「痛い痛い!!頭を掴まないで!!鬼!!ドS!!」
私が掴んでいたのは驚くべきことに小さな人間だった。透き通り、水色が少しかかった羽をバタつかせている。
もしかして...妖精?いやいや、そんなわけない。この世界に妖精だなんて...
「自己紹介します。私はフィリフェ。妖精よ」
最初のコメントを投稿しよう!