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従業員用ドアをそっと押し、中に入ると、窓がまったく無かった。
目を凝らして見なければ先が見えないほどに暗い。
こんな場所にゾンビがいたら、一瞬のうちに殺られてしまうかもしれない。
ヴィィィーン・・・・。
煉子は立ち止まった。
何か音が、する。
すぐ近くだ。聞き覚えのない機械音。
銀色の窓つきの冷たいドアから顔だけ覗かせて中を見る。
誰か、いる。
こちらからは背中しか見えない。
何をしているのだろう・・・・。
煉子はスーパーの店内の気配も気にしながら、背中で銀色のドアをそっと押して、遠目からその人物の背中越しに垣間見える手先を凝視する。
"ヴッッ・・・・"
何をしているのか一瞬で理解できた煉子はその場に嘔吐しそうになった。
喉元まで出かかった酸味の強い唾を必死に飲み込み、深呼吸するが、その空間全体に漂う人肉の・・・ゾンビ肉の腐った臭いが鼻の奥に充満してくる。
ヤツは、肉をミンチにする機械を使って、あらゆる肉をミンチにしていたのだ。
それが何の肉なのかは考えたくもない。
ただ、金属の穴から規則的に押し流れ出てくるミンチになった生肉を両手で掬い、顎まで涎を垂らしながらクチャクチャと音を立てて貪っているのだ。
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