ショートショート「彼女のプレゼント」

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ショートショート「彼女のプレゼント」

b1576831-a205-46f9-93af-4add554ed660 達郎は部屋に入るなり包みを開けた。 彼女が誕生日のプレゼントをくれた。 達郎にとっては初めてのことで、喜びもひとしおだった。 包みの中から出てきたのは赤い手袋だった。 「嬉しい」達郎はそうつぶやくと、この大事なプレゼントをどこにしまおうかと考えた。 クローゼットにしまおうか、それとも、タンスの中? いやいや、これは彼女のくれた大事なプレゼントだ。 彼女をもっと身近に感じていたい。 達郎は机に目を向けた。 ここなら彼女を身近に感じられる。 達郎は引き出しを開けた。 そして、引き出しに手ぶくろをしまった。 ふふふ。 思わず笑みがこぼれる。 達郎は引き出しを閉じた。 しかし、少し経つと達郎はある考えが脳裏をよぎった。 という考えだ。 通常なら、それはありえない。 しかし、これは彼女のくれた大事なプレゼントだ。 絶対にありえないとは言えない。 達郎は少し考え、今閉じたばかりの引き出しをもう一度開けた。 引き出しの中には先ほど置いた場所にちゃんと手袋があった。 良かった。 達郎は手袋がちゃんとそこにあったことに安心した。 達郎はまた引き出しを閉じた。 しかし、時間が立つとやはりまた同じ考えが脳裏をよぎる。 もしかして、今度こそ手袋が引き出しを通り抜けてどこかへ移動するんじゃないか? 達郎はまた引き出しを開けた。 引き出しの中にはやはりちゃんと手袋があった。 あぁ、良かった。 達郎は安心してまた引き出しを閉じた。 しかし、引き出しを閉じるとまた同じ考えが脳裏をよぎる。 さっきまではちゃんとそこに手袋はあった。 しかし、今度こそ手袋が引き出しを通り抜けてどこかへ移動するんじゃないか? 達郎はまた引き出しを開けた。 引き出しの中にはやはりそこに手袋があった。 あぁ、良かった。 達郎はまた引き出しを閉じた。 そして、引き出しを閉じるとまた同じ考えが脳裏をよぎった。 今度こそ本当に手袋が引き出しを通り抜けてどこかへ移動するんじゃないか? 達郎は疑いながらまた引き出しを開けた。 引き出しの中にはやはりちゃんと手袋があった。 あぁ、良かった。 達郎は安心して引き出しを閉じた。
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