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帰国前には、一人でオーストラリア国内旅行をしたり、運良く同じゲストハウスで知り合った年上のお姉さんと一緒の二人旅もできた。
そのお姉さんからは色んなことを教えてもらった。
ありとあらゆるアレルギーがあるらしく、バスが日陰から日向に出るとくしゃみする。また、その逆も然り。
私が死ぬ時はきっと汚いわぁ、目やに、鼻水、喘息、湿疹、全部出ると思うから、というのはある種名言だと思った。
日本国内でも一番安いのはバスだけれど、オーストラリアも同様で、
基本夜行バス、稀に列車、帰りは飛行機と取り取りに方法も変えてみたりした。
思い出深いのはお姉さんと一緒に行った旅行で、バスと列車を使って、ケアンズまで行って、そこのちょっと下にあるタウンズビルというところからエアーズロックのあるアリススプリングまでのバス2泊3日である。
運ちゃんが、ほらローストビーフだよ!とおじさんギャクを飛ばすから見てみると、牛がどかーんと道端に死んでる。多分、車と衝突したんだと思うけど、車の方が大破してるんじゃないの?って感じ。
オーストラリアのTVシリーズで、フライングドクターってのがあった。
それこそ、オーストラリアのど真ん中じゃ街に行くにも1日がかりで、そのために救急車ならぬセスナが飛ぶ!
そんな辺鄙なところなので、私たちが乗ってるバスが新聞なんかを乗せて運んでた。これは自分の書いてる小説にも使わせてもらっている。
面白かったのは、ちょうど道路を横断するように羊たちがわらわらといて、バスの運ちゃんがクラクションをブッブーと鳴らすと、どうなったと思いますか?
羊さんたちはねー。
バスの進路方向に進んで、道路を横切ってはくれないのねー。
そりゃそうーだよね。
道は人が勝手に作ったものだもの。彼らには関係ないわ。
しばらくバスはクラクションを適時鳴らしつつ、トロトロと走りましたとさ。
また、何時間乗ってても、ずーっと変わらぬ景色があまりに続くもんで、
地平線までまっすぐ続く道の先には何があるんだろう? と思ったら
相変わらず、まっすぐな道が地平線に向かっていた。
なるほどなーと妙に納得した。
北海道はスキーで1回行っただけなので、夏に行ったら、同じような景色が見れるかもしれない。
大阪出身の私は関東の地理に弱く、更に北海道はどうしても遠く感じてしまう。
その時はまだ許されていたエアーズロックも登ったし、なぜかラクダに乗ることもできて、乗ってみたりした。
ラクダさんが起き上がる時、後ろ足から立ち上がるので、振り落とされるんじゃないかと思うほど前かがみになって驚いた。 それこそポニーさんに乗せてもらうぐらいちょろっと歩いてくれて、あっという間に乗馬ならぬ乗駱駝は終わってしまった。
できる限り、それこそ今まで引きこもっていた分を取り戻すかのように、なんでも体験して見ようとした。
ちょっと可哀想だった実験は、カセットテープに私の声を録音して家に送ったものだった。
「ラッキー! ただいま! こっちや、こっち! ただいま!」
妹たちから聞いたところによると、狂ったように玄関に向かって飛んで行って吠えて私の帰りを待っていたそうだ。
そうして、1年後、帰国した時に感じたのはトイレから、机から、椅子から、全てが小さく感じたこと、と黒髪の無表情な人たちが私に向かってずんずん歩いてきて、まるで私にぶつかりにきているか思ったこと。
その後のアルバイト先で、1年間の海外生活ゆえの英語コンプレックスを抱えるようになった私はそれをなんとかしたくて、今度は自力で再度海外語学研修を企てた。
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