プロローグ

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プロローグ

 それはある仕事休みの日曜の午後。  ()まりに()まってもうてた事務所の洗濯物を、俺が必死に片付けている時のことでございました。  どうもどうも、あなたの友達、水地亨(みずちとおる)です。  友達になった(おぼ)えのない方も、文句言わんとお付き合いください。  秋津(あきつ)家の新しい稼業(かぎょう)のひとつに加わったアトリエAの運営は、なんと美大出たての元・画学生、うちのツレ、アキちゃんに(ゆだ)ねられることになりました。  無茶や。誰もがそう思ったのやけどな。  まあまあ行っとけ行っとけ、なんかあったら俺も手伝(てつど)うたるからっていう調子のええオッサンやお兄さん、おばちゃんや妖怪や神さん()の勝手な言い分により、社会人一年生が社長という、無茶苦茶なスタートを切ってしまったんや。  でもまあ行けるんちゃう?  俺のアキちゃん天才やし。顔ええし頭もええし、家は金持ちなんやから?  そんなふうに考えていた時期が俺にも一瞬ありました。  だがな。世間(せけん)はそう甘い場所とちゃうんや。  (くわ)しい話はここではせえへんけど、俺らも一応、世の荒波には()まれてますわ。  ザブーンザブーン!  令和(れいわ)元年そして二年。いきなりのコロナ()や。
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