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1.竹川和生
竹川和生は11歳離れた弟と帰宅する途中、寂れた公園に入っていた。
―
「·····たまに来るのも悪くないな」
僕より先に奥へ進む弟の朋希は、まだ小学生だ。
寂れていても公園は楽しいのだろうか·····
どんどん奥へと進んでいく。
「早くしないと暗くなるよ」
僕の忠告なんて多分届かないだろう·····
「お兄ちゃん!猫がいるよ」
朋希が僕を振り向いた。
「·····猫?」
「ほら!見て!まだ小さいよ!」
朋希は小さな黒猫を手にして、僕のそばに駆け寄ってきた。
「かわいいね〜」
小学5年生、猫の持ち方は雑だ。
「·····あの、猫はこうやって抱えるんだよ」
何故か僕は正しい猫の持ち方を教えていた。
「お兄ちゃんって何でも知ってるね〜」
「·····朋希より先に生まれたからね」
子猫は温かかった。
僕を見上げて首を傾げた。
·····なんだろう、懐かしい感じがする。
「·····」
「お兄ちゃん?どうしたの?」
·····似てる。
·····高校2年生の冬に遠くに行ってしまった友達に似てる·····何でだろう。
「お兄ちゃん?」
朋希の声は聞こえているが、なんて言えばいいのかわからなかった。
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