1.竹川和生

1/3
前へ
/68ページ
次へ

1.竹川和生

竹川和生(かずき)は11歳離れた弟と帰宅する途中、寂れた公園に入っていた。 ― 「·····たまに来るのも悪くないな」 僕より先に奥へ進む弟の朋希(ともき)は、まだ小学生だ。 寂れていても公園は楽しいのだろうか····· どんどん奥へと進んでいく。 「早くしないと暗くなるよ」 僕の忠告なんて多分届かないだろう····· 「お兄ちゃん!猫がいるよ」 朋希が僕を振り向いた。 「·····猫?」 「ほら!見て!まだ小さいよ!」 朋希は小さな黒猫を手にして、僕のそばに駆け寄ってきた。 「かわいいね〜」 小学5年生、猫の持ち方は雑だ。 「·····あの、猫はこうやって抱えるんだよ」 何故か僕はを教えていた。 「お兄ちゃんって何でも知ってるね〜」 「·····朋希より先に生まれたからね」 子猫は温かかった。 僕を見上げて首を傾げた。 ·····なんだろう、懐かしい感じがする。 「·····」 「お兄ちゃん?どうしたの?」 ·····似てる。 ·····高校2年生の冬に遠くにしまった友達に似てる·····何でだろう。 「お兄ちゃん?」 朋希の声は聞こえているが、なんて言えばいいのかわからなかった。
/68ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加