2.西村航太

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翌日、俺はを連れて家を出た。 「見つかればいいけど·····」 里親を探すとは知らない子猫だ、俺にスリスリして甘えてくる。 「うちで飼うの難しくてごめんな·····あと2年早かったら飼えたかもしれないけど·····」 2年前なら俺は都内で一人暮らししていた。 学生が猫を飼うなんてとんでもない話だろうけど、実家でなければ飼えたはずだ。 ·····実家の、平均10歳の猫たちに子猫は刺激的すぎる。 「·····こう見えて心配性なんだよ、俺」 ― その日、俺はゼミの中で猫を飼えそうな人を探した。 でも·····誰もが首を横に振った。 「ニャーン」 「よしよし·····お腹空いたよな」 随分と人懐っこくて、おとなしい子猫だった。 ·····やっぱり似てる。 「ニャーオ」 しかし·····よく喋る猫だな。 それも似てるかもな····· ― 里親は探せなかった。 母は飼ってもいいと言ったけど·····妹が帰ってきたら怒りそうだ。 弟も呆れるだろう。 親父は何も言わない気がするけど。 「どうしよっかなー」 今までの猫たちは、俺が道端で拾ってきてしまったのだ。妹は犬が飼えない理由を俺の所為にしている。 「猫可愛いのになぁ」 途方に暮れつつ駅に向かうと、懐かしい人とすれ違った。 「·····航太か?」 振り向くと、幼なじみの純がいた。 「純·····?!」 純に会うのは俺の手の中の子猫·····に似たあの子のお通夜以来だった。 純は声を掛ける勇気のある人だからありがたい。 「元気か?」 「·····おう!」 純は小学校から高校まで一緒だった。 でも、純は高校在学中に唯一の家族であるお母さんを亡くして、高校を辞めたのだった。 「久しぶりだな〜!」 お母さん伝で知り合いの家に居候し、高校の卒検まで取った話は風の噂で聞いた。 「·····おう」 幼なじみと言っても、そこまで仲が良いわけでもない。かと言って仲が悪いわけでもない。 「急いでるのか?」 「いや、全然」 頭も顔も良くて、性格は竹を割ったような真面目な奴で、運動神経も良くて、大抵の事はなんでも出来ると言っただ。 完璧すぎて気持ち悪いと思ったことがある。 ただ、真面目すぎて頭が固いところもあった。 でも、今目の前にいる純は昔より優しくなった気がする。 「よかった、じゃあお茶でも·····」 ·····俺と違って純は社会人だ、しかも4年目くらい。 学生じゃないし、もしかしたらこの猫を飼えるかもしれない。 純についていくと、静かな喫茶店に着いた。 「突然誘っちゃったし奢るよ」 「いやいや·····それは悪いよ」 小学校から高校時代の思い出話をしていた。 嫌いしれないと思っていたのは俺の一方的な思考であり、純にとって俺は幼なじみ以外の何でもないようだった。 「あの時が1番楽しかったよな」 純は懐かしそうに笑った。 ·····真顔も笑顔もムカつくほどイケメンだ。 「·····そうだな」 ·····嫉妬してばかりでごめん····· 「·····あの、純さぁ、猫飼える?」 最後に猫について聞いてみた。 飼えるかどうか、飼えそうな人がいるかどうか····· 「猫かあ·····」 純も多分、あの子を思い出したに違いない。
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