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寂しさを紛らす為のテレビは今日は要らない。
―
金曜日の所為、酒の所為、俺は猫に話しかけていた。
俺なんかに興味無いであろう子猫に·····。
「·····さっきから思ってたんだけど、誰かに似てるよな」
猫は相変わらず俺をじっと見つめていた。
「·····俺は生まれ変わりとか生き写しとか、あんまりそういうの信じない。でも、その顔がなんか懐かしい」
猫は首を傾げた。
·····気の所為かもしれないけど、それが懐かしい。
―
初めて会ったのは、高校の入学式だった。
教室には同じ中学のメンツと、あとは知らない人しかいない状態。興味は特に無かった。
あと15分で先生が来るであろう時間になった時、あの子が入ってきた。
·····よく覚えているよ。
今、俺の目の前にいる子猫みたいな顔をして俺を見ていた。
目が合うと、ぎこちなく微笑んだ。
第一印象は「美人」だ。
―
目を覚ますと、猫が俺のお腹の上で眠っていた。
猫と話していたことは覚えてるけど·····記憶はあまり無い。
「(そっか、寝落ちしたんだ)」
猫は夢の世界。
起こすのが可哀想になってきた。
カーテンを破いたわけでもないし、リモコンのボタンを押したわけでもないからな。
「·····悪いな、俺は用事が·····」
ゆっくり猫を抱えてどうにか起き上がると、猫は目を覚ました。
「·····俺よりもマトモな人に飼ってもらおうな」
小さめのダンボールに猫を入れ、ゆっくりと大きな布で包んだ。
「こんな俺でごめんな」
猫を飼えそうな人は心当たりがある。
勿論、この猫を俺が飼えば早い。
家族がいない俺には本当は吉報だったのだけど·····
―
両親が大阪でデキ婚して、俺が生まれた。
父親はDV男だし、母親はメンタルがやられて俺をネグレクトした。
結局、俺が3歳になる頃に離婚し、実母に連れられて愛媛の実母の実家に2年間住んでいた。
その間に実父は刑務所に行き、実母は自殺。
祖母は俺を快く思っていないので物置に監禁·····
それを助けたのが育ての母であり、祖母の末妹。
5歳から長いこと育ててもらった。
でも結局、高校2年の冬に病気で亡くした。
家族ってなんだ?
·····俺には何が何だかわからない。
猫のことを幸せにできる自信が怖いくらい無い。
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