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僕は配達の仕事を失ってすぐに、今までの給料を使い果たして地方に移り住んだ。
「すみません、今日の鑑賞チケットはまだありますか?」
「もちろんございます」
涼しい館内を行き来する親子連れやカップルを案内し、満席になった円形のホールの扉を締めると、ゆっくりと照明が落とされていく。
僕は一番出口に近い席に座り、周りと同じように天井を見上げた。
未だに僕の手は時折、どこにもないお客様の手を握ろうとしてしまう。
「本日はどうぞリラックスして満天の星空をお楽しみください」
そのアナウンスを合図に完全に消灯する。
僕が掌を口元に寄せて息を吹きかけると、暗闇のホールに無数の星が映し出される。
誰かが「綺麗」と呟いたのが聞こえた。
おわり
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