掌のパウダー

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 3時間の注文は特別だ。  ボックスの中身はいつもより重いし、何より鑑賞中にお客様から伺っているお願いを一つ叶えるオプションが付いている。 「今日は私の誕生日なので」 「はい、伺っております。おめでとうございます。束の間ですが、素敵なお時間を過ごしていただけるように準備いたします」  いつかと同じように、お客様はソファに掛けて、シーリングライトを消した。 「それでは、特別な星空をお楽しみください」  部屋が白く覆われたのを確認して、僕は掌のパウダーに息を吹きかけた。  ガスの星雲を眺め終わり、一面に星が輝きだすとお客様は僕を手招きして隣に座らせた。 「本当に美しいです」 「そう言って頂けて何よりです。今夜は長いですから、お気を使わずリラックスしてくださいね」  僕はお客様の手を握った。
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