掌のパウダー

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 静かに並んで眺めていると、お客様は気持ちよさそうに僕の肩に寄り掛かった。  手を伸ばして星に触れると、そこにはまた新しい星が輝きだす。 「なんて幸せなのかしら」 「そう言って下さるのが何より嬉しいです」  お客様は僕に繋がれた手にもう片方の手を添え、耳元で囁く。 「星川さん、私のお願いした流れ星、見せていただけますか?」 「もちろんです。お任せください」  僕はポケットから銀河社長に渡されていた袋を取り出した。 「それではお客様、少しの間、目を瞑っていて下さい」  今日の特別注文を受けて、新しいパウダーを調合したと社長は言っていた。  僕は暗闇の中、足元に置いているボックスの場所を確かめた。  指示されているとおり、ガスの噴射口に少しずつパウダーを入れようと立ち上がったところで、何かに躓いてしまった。  ガタン  僕の体は満天の星空を切るように前に傾いた。
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