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掌のパウダー
晴れ晴れしく大学を卒業した翌日、入社予定だった会社が潰れた。
それからひと月の間に、親からは冷たく見放され、友だちは一気に離れ、彼女とは音信不通になった。こうも人は薄情なのかと驚くとともに、未だかつて感じたことのない不幸に苛まれた。
昼間は家に閉じこもり人との接触を避けた。夜になると僕はあてもなく近所を散歩するようになった。
いつもと違う道を歩いた日だった。たまたま立ち寄った一度も入った事のないコンビニで、見知らぬサングラスのおじさんに声を掛けられた。
「君、いい感じに暗い顔してるね。ぜひスカウトしたい」
数秒固まった僕の隙を見逃さなかった。僕の手から缶コーヒーを半ば強引に取り上げ、さっさとレジで会計を済ませて戻ってきた。
「少し時間ない?悪い話じゃないから。ね?」
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