KEEP OUT!

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 オレの煮え切らない態度に最初に口を開いたのは里依だった。   「マユ、私ね、中学生の時からずっとアキが好きだったの、アキもそうだったって、だから、ね」  え、待って里依、今それ言っちゃう?!  今度はマユがじっとオレと里依の顔を交互に見て。  ハッと小さくため息をついて。 「だから何? 今付き合ってるのは私とアキ、里依は今更でしょ?」    ……あれ? マユ、さん?  いつもの温厚なマユではない、何だか般若のような顔をしてらっしゃる、ような。  その表情にヒクッとオレの心臓が縮み上がる。 「でもアキは私の気持ちにこたえてくれたよ?」  ね、とオレに同意を求めて首を傾げて微笑む里依から必死に目を反らした。  (あお)るな、里依、頼むから!! 「ホラね、アキはもう里依に関わりたくないって」  何も答えないオレを見てクスクスと笑うマユ。 「後から割り込んできたのはマユじゃん!」    声色が変わった里依を盗み見れば腕組みをしてマユを睨んでいた。  初めてみるマユのその表情はさながら蛇のようでオレの背筋に冷や汗が伝っていく。 「はあ?! あんた、私がアキのことどう思ってるかって聞いた時、ただの友達って言ってたよね?!」    ツカツカと里依に近づいたマユが里依の肩をドンと押す。 「言えるわけないじゃん、でもあんた本当はわかってたから聞いてきたんでしょ? 気付いてたんじゃないの? 私の気持ち」  里依も負けじとマユを押し返す。 「気付いてたよ、でも言わないなら仕方ないじゃん、言ったらちょっとは遠慮したかもしんないけれど」 「は?! ちょっと、って何? 普通親友の好きな男だって気付いてたなら諦めるんじゃないの?!」  お互いにセーラーの襟首部分を掴み合って。  顔を寄せ合っている、ああもう既に一触即発の状態!! 「親友ならね? 私別に里依のこと親友だって思ってないもん、アキと仲が良かったから利用しただけ」 「どんだけクズいの?! マユ、あんた根性腐ってる!」 「クズのあんたに言われたくないわ、さっき何してた? 私20分だけ待っててって伝言したよね?」    あれ、里依は30分……て。   「人がここに戻ってくる時間計算してたでしょ、その上で? 私に見せつけるためでしょ! どっちがクズなのよ!!」  オレという存在を忘れたかのように二人の足元は既に夢中で蹴り合いを始めている。  凍り付いたオレが選んだ道は一つ。  そっとカバンを持って入り口へとカニ歩きでにじり寄った、その時。 「おい、待ってろや、クズ」  振り向いたマユが冷ややかにオレを見て笑う。   「そうだよ、ケリつけるまで待ってろ、いいな? クズアキ!」    里依はニヤリと笑って、それから二人は息ピッタリに。  前の出口を里依に。  後ろの出口をマユに閉められて。    放課後の教室はオレ達だけ残してKEEP OUT!  逃げ場を無くしたオレはがどれくらいなのか時計を見上げたのだった。 【完】
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