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「……どういうこと?」
その声に里依から一気に離れたオレの目に飛び込んできたのは。
教室の入り口に立ち能面のように無表情な顔で、オレと里依を見ているマユの姿。
のぼせきっていた頭が一気に冷え上がる。
……言い訳、できるわけなど、ない。
何も言えないでいるオレを庇うように。
「ごめんなさい、マユ。私なの、私からアキが好きだって」
「里依には聞いてない、アキに聞いてるの。ねえ、どうして? 何で里依と?!」
今にも泣き出しそうに顔を歪めたマユにズキリと心が痛む。
『いいの?本当に?』
オレの返事を聞いて泣き出したマユ。
手を繋ぐだけで恥ずかしそうなマユ。
好きだよって伝えたら、私の方がアキのこと好きなんだから、って真っ赤になってたマユを。
自分のせいで泣かせてしまう。
「マユ、私が悪いから。アキは悪くないの、私がアキのことを好きだっただけ」
ごめんなさい、と泣き出した里依を見て。
自分の情けなさにオレが泣きたくなった。
「ねえ、アキは私と里依、どっちが好きなの?」
マユのその言葉に里依もオレを見つめる。
「オ、オレの好きなのは……」
マユと里依、二人の顔を交互に見て、それから口を噤んだ。
……言えるわけない、今はどっちも好きだなんて。
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