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やがて私と妖精は、この国で最も高い建物の頂上までやってきた。
見おろしても、街には人一人いない。
多くの人はシェルターに移動したか、家にこもっているのだろう。
「それはそうと、この格好は何」
「神様からのプレゼントだよ。雰囲気を出せって」
今私が着ているのはフリルがあしらわれたファンタジックな服で、平和だった頃にテレビで見ていた魔法少女のようだった。
うん、30前の女が着るにはイタイ。
「それより、隕石の直撃まであと5分だよ。急いで食い止めないと」
「あと5分か……。カップうどんが出来るまでと同じ時間じゃない」
服装と同じくファンシーなステッキを握りしめ、空を見上げると、確かに空には赤々しい隕石の影が迫っていた。
「こんなクソみたいな世界なら滅んでもいい気もするけど、おいしい物や大好きな物をまだまだ楽しみたいからね……」
そう言うと、私の体は宙へと浮かび上がり、隕石へと近付いていく。
「仕方ない。世界を救っちゃいますか」
どこかで聞いたような台詞を口にしながら、私は隕石を消滅させるために空を舞う。
例え隕石を消滅出来ても、この世界の未来は混沌に満ちているだろう。
だけど私はまだ死にたくないし、そう思っている人はきっと少なくないだろう。
だから私は、この隕石を抹消してみせよう。
カップうどんが出来るまでの時間と同じ、あと5分の間に。
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