うちの犬

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うちの犬には目が無い。 私以外の女に移ろうから。 うちの犬には耳が無い。 私以外の声に誘われるから。 うちの犬は喋らない。 私に向かって言った愛の言葉を、他の誰かにも言っていたから。 だったらもう声なんて必要無いじゃない。 私の犬には手と足が無い。 何にも触れず、何処にも行けない。 私は幸せだ。根っからの好色漢だったあの犬が、私の傍で静かに生きているという事実が私の心を満たした。 ある日突然、犬は私を襲った。 体の反動だけで飛びかかり、歯で噛み付こうとしてきた。 だからバツとして体を奪った。 すると、犬はとても静かになった。 ご飯を全く食べなくなったのは少し不安だが、まぁ問題ないだろう。 明日から2人きりで旅行だ。楽しみで眠れない私は、ベッドの中で犬を抱きしめた。 お風呂に入れてないせいで少し臭うが、むしろ、より一層犬の事が愛おしく感じられる。 良い夢が見れそう。 私はそう思い、目を瞑った。
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