お留守番と、素敵な休日。

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「怒ってるかな…ハルくん…。」 ハルくんとのご飯を買い忘れて、徒歩2分程度のスーパーからの帰り。ちょっぴり手抜きの出来合いのお惣菜を手に、少し早足になりがなら帰宅を急ぐ。 5分で帰るから!と言い残して出てくる時、ハルくんは不満げな顔でこちらを見つめていた。 そんなヤキモチ妬きなハルくんのことが、私は大好きだ。 でも、ヤキモチの妬き過ぎで、イタズラするのは勘弁して欲しいかな。怒ったハルくんを宥めるの、大変だし。 マンションの自室に着いて、ドアを開く。 「ハルくーん…ただいまー…」 機嫌を損ねているであろう彼に、小さな声で帰宅を知らせる。やっぱり、お出迎えは無しかぁ。 ぱたぱたとハルくんがいるであろうリビングに、足を運ぶ。やっぱ、拗ねてるのかなぁ。 ドアを少しだけ開いて、リビングを覗く。ハルくんは居ない。その代わりに。 「あーあ、やられちゃった。」 テーブルから落とされた小物。 巻き散らかされたティッシュ。 全く、赤ちゃんみたいな犯行だ。と、思いながら、リビングを見渡して、ハルくんがいないことを確認する。 「ってことは、洗面所か。」 と、呟いて、手を洗うのも兼ねて、洗面所へ。 手を洗いながら、きょろきょろ見回す。 あ、いた。 「ハルくーん。そこはベッドじゃないよー。」 そう言って、洗濯カゴの中で丸くなっていたブルーグレーの毛並みの猫_ハルくん_をひょいと抱き上げる。 不満そうにみゃう。と鳴かれてしまう。柔らかな灰色の毛並みをゆるゆると撫でながら、語りかける。 「ごめんね。でも、ちゃんと5分で帰ってきたし、お惣菜買ってきたから。今日はお料理の分もハルくんと一緒にいるからね。」 言っている事が伝わったのか、今度は嬉しそうに頭を擦り付けて、ごろごろと喉を鳴らす。 「なぁに。ハルくん。今日は甘えんぼさんなの?」 ハルくんがゆらりと、ふわふわのしっぽを揺らす。 ハルくんと私がいれば、どんな長い休日だって、一瞬なんだ。 でも、なんだか今日はいつもより、素敵な休日になる気がした。 たった5分の別れが、24時間を鮮やかにしてくれる。
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