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 丁寧に返事をし、デスクに置いてあるメモ用紙に〈会議資料5部〉とメモをとると、時間を気にしながらも仕事の準備を進める。  フロアはすでにガヤガヤと活気に満ちている。活気というか〈あちこちで揉め事がおきている〉に近い気がするけど。  もうすぐ9時、デスクの横に立つ。  端から端まで見渡せる広いフロアにいる75人ほどが徐に立ち上がり一方向を向いている。 「え? あぁ、もう時間?」  数人が慌てて立ち上がり毎朝の朝礼が始まる。各課から連絡事項が告げられるけれど、今日は少なめだ。 「他に何かありますか? なければ終わります。今日も一日よろしくお願いします」 「「おねがいします」」  70人以上で一斉に交わす挨拶。  朝礼が終わるといつも通りの業務を始める。だいたい9時15分を過ぎると電話がひっきりなしに鳴りだす。  電話機の着信ランプは全部で15個ほど。さすがに全部つくことはないけど4〜5個点灯していることはザラだ。  電話対応は主に新入社員の仕事。そして女性社員も出ることになっている。  暗黙の了解。  これは建築業界の男性中心の考え方が根強いせいだと早い段階から理解できた。同じ理由でコピーなどのいわゆる雑用も女性社員の仕事だ。
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