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宇宙宅配チャマト
止まらぬ地球の温暖化。
僕たちは、地球を救うべく、地球政府の依頼を受け、宇宙宅配チャマトに乗り込んだ。
宇宙の彼方、『椅子噛ンドル星』へ、『ストップ温暖化向け玉手箱』を仕入れに、何万光年もの果てしない宇宙の旅をして来た。
僕たちは、地球を出発したときの年齢・体力・外見を保つサプリを毎日飲んでいたので、外見はそのままだけど、実年齢は、何万光年歳ということになる。
なので、現代の地球人たちは、私たちの子供や孫の世代からも、はるか何万光年世代を経た人たちとなる。
あと5分で、地球。
出発するときは、まだ、青かった地球も、温暖化が進み、すっかり、太陽のように真っ赤っか!
一刻も早く地球に着陸し、この『ストップ温暖化向け玉手箱』を開け、温暖化中和ガスを放出し、地球の温度を正常に戻さなければならない。
そうこう言っているうちに、地球に到着ッ!
きっと、テレビ中継やインタビュー、いろんな報道番組や講演等々への出演で、大忙しとなるだろう……。
……と、思っていたのだけれど……、
あれっ?
地球を救うべく、何万光年もの旅を経て、『椅子噛ンドル星』から、『ストップ温暖化向け玉手箱』を仕入れて来たのに……、
帰還セレモニー的なものって~……、
えっ?
ないの?
「あれれれれ~ッ?!」
……って、思いつつ、政府のドアフォンを押してみた。
ー ピンポ~ン♪ ー
「は~い、どなた?」
「毎度お世話になっております、宇宙宅配チャマトですけど、ご注文の品、お届けに参りました~♪」
「はいはい~」
官房長官らしきおっちゃんが出て来た(……いやいや、おっちゃんと言っても、実際は、僕より何万光年歳も若い男なのだけれど……)。
「こちらに印鑑お願いいたします~」
「はいよ~、こちらに~……、ヨイショと! これでいいですか?」
「はい、ありがとうございます! OKで~す♪」
伝票に受領印を押してくれた。
「えぇ~っと……、この荷物は、何だったかな?」
「地球政府さんからご依頼頂きまして、『椅子噛ンドル星』へ仕入れに行って参りました『ストップ温暖化向け玉手箱』です♪」
「あ~~~、何か、そんなん、大昔の政府が発注してたらしいね~」
「ですね~♪」
「だけど、これは~、地球の温度を正常に戻してくれるだけの玉手箱なんだよね?」
「そう~……、ですね」
「だよね。それがさ~、地球の温度を正常に戻して、空気清浄も出来た上で、地球の温暖化を完璧に解消出来る装置が、何度も何度も実験に実験を積み重ねた上、ついにッ! つい先程5分前に出来ちゃったんだよ~、完璧な装置が~♪」
「えーッ! でも、お役所仕事的には、その装置を認可するのに、まだ、だいぶん時間掛かるんでしょ?」
「そんな、何万光年前の話してるんだよ。充分な検証を経た上なんだから、完成→即決→認可→即実用だよ♪ それも、あと5分後♪」
「え、えぇ~……、そうなんですね~……」
僕らの、何万光年もの宇宙宅配は……、無になってしまったッ!
「せっかく、仕入れて来てもらったんだけど、申し訳ないね~」
「ただただ、残念です……」
「到着が、あと5分早かったらね~、……って、いやいや、君、5分前に日付変わったとこだけど、この玉手箱、消費期限、昨日までになっとるよ!」
「えッ?! ……どっちにしても、ご、ご、5分前に、消費期限切れてたの~ッ?!」
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