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「レッシュベルは何をしているんだ!? あれではジブールの魔法をまともに喰らってしまう!」
「だから騒ぐなマハーチェ。ナナキは大丈夫だ」
平然としている。ナナキにもわかっているのだろう。その攻撃は悪手だということを。己のすべてをさらけ出した魔法──それはもはや冷静さを欠いた暴力と同じだ。
「アミーシャ!!」
ナナキの声が高らかに響いた。猛吹雪のなかを一筋の光が突き抜けるように。そして、ナナキの体は光に包まれる。光を身に纏いアミーシャの一撃に応えるかのように突進を試みた。
「熱源」と名付けられたその魔法は、光を身に纏い文字通り自身が熱源となり攻撃する魔法だ。光から発せられる熱に着目した魔法はゆえに術者の力量によって纏う光の色が変わる。炎のような赤色は未熟、洗練されたその色は眩く光る白色。ナナキは白色の光となってアミーシャに突進した。
赤と白、二色の色が衝突する。空気が圧縮されたのか、二人の色が混ざり合うことなく周りに飛び散っていく。間に見えない障壁があるように。
「ダメだ! まぶしすぎて目が開けていられない!!」
光と炎が踊る。反発し合う二つの魔法が魅せる一種の芸術とも言えるかもしれない。実力が均衡する者同士だからこそ、すぐに弾けず、かといって混ざり合うこともなくにらみ合い続ける。
瞬きを一つした後に音が弾けた。マハーチェは腕を顔の前で交差させて強烈な光から身を守っていた。今、確認はしたくないが、他の多くの見物人もそうしていることだろう。もったいない。非常にもったいない。
舞い降りる雪に降り積もった雪に、光が乱反射し大きな光源が現出されていた。雪を覆い尽くすような、呑み込むような荘厳な白光が視界を奪う。
──この光だ。いや、この光以上の輝きが記憶の底にこびりついている。あのとき、俺は……見惚れていた?
光が小さくなるように、記憶が薄れていく。忌々しい制限が記憶のその先を追及させないようにしていた。
完全に光が消えたとき、晴れ渡った雪面の上に立っていたのはナナキだった。
「アミーシャ!!」
アミーシャの取り巻き二人が飛び込んでいった。二人の声に気づいたのか、ナナキはしゃがみ込んで横たわる金色の髪を撫でるとすぐにその場を後にした。
「行くぞマハーチェ」
「あ、ああ……」
「何を驚いたような顔をしている」
「いや、逆にタイゼンは驚かないのか? ナナキが、魔法を使えなかったナナキがいとも簡単にアミーシャを倒したんだぞ」
口元につい笑みがこぼれる。
「魔法が使えなかったわけじゃない。魔導書が読めなかっただけだ。それに、元々ナナキにはそれくらいの力はあった」
また吹雪が戻ってくる。雪の中に倒れたアミーシャの横顔は、不思議と満足そうに微笑んでいた。
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