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「マハーチェ先生! 大変! アミーシャが!!」   取り巻きの一人、エリアーシュが水魔法で回復を試みる。雪の中で嫌というほど目立つ焼け焦げた肌が、手の平から流れる水の滴によって次第に元の白い肌に戻っていった。 「アミーシャはひとまず医務室へ運ぶ。後のことは──」  マハーチェに抱きかかえられたアミーシャが薄っすらと目を開けた。取り巻き二人が安堵したような声を出してその側に近づき、名前を呼んだ。 「問題ない……です。それより、ナナキ……」  自らの足で雪の上に立つ。よろけた体を両脇から取り巻きが支えた。アミーシャはまっすぐにナナキの方へと視線を上げたが、取り巻き2人はあからさまにナナキを睨みつけた。 「アミーシャになんてことするんですか!?」 「そうだよ。これは訓練! アミーシャの厚意を無碍にするようなやり方をして楽しいの!?」  何も知らない者が汚い罵声を浴びせる。ナナキを見れば、言い返せばいいものの黙ってうつむいたままだ。 「黙ってないで謝りなさい!」 「アミーシャにケガを負わせたんだよ!? 許されると思ってるの?」  ナナキはなおも黙り込んだまま。こんな輩、力でねじ伏せればいいのだ。アミーシャを案じているのだろうが、反吐が出る。  気にしないようにと思っていたが、思わず出てしまった舌打ちを聞いて取り巻き2人は肩を震わせてこちらを見た。 「な、なによ、やる気……?」  強気でいようとしているのだろうが、顔が引きつっている。面白い。 「やめなさい。タイゼンも、生徒に変な挑発はしないでくれ」 「無論、わかっている。マハーチェ教授」  間に入ったマハーチェに止められ、取り巻きはまたアミーシャの方へと振り返った。ところが、そのアミーシャの表情が強張っている。 「離してちょうだい、腕を」  弱々しいがはっきりとそう言った。その言葉に2人がおずおずと腕を離すと、アミーシャは不確かな足取りではあるもののナナキの方へ一歩、また一歩と近づいていく。 「ごめんなさい」  黄金色の髪の毛が揺れた。頭を下げたのだ。予想外の行動に、後ろに取り残された取り巻きは「アミーシャ!!」と声を上げ、顔を上げたナナキは驚いたように目を丸くしていた。 「ボフミラとデニサがひどい言葉を。2人には悪気はないと思いますが、これは真剣勝負。ナナキを傷つけることは許せません」  後ろを振り返ると、アミーシャは強い眼差しで2人を睨めつけた。2人は驚いた表情のまま凍りついたように固まってしまっていた。 「ナナキ。誇ってください。あなたは私に勝った。それは紛れもない事実です」  改めてナナキへと視線を戻したアミーシャは、そう言うと珍しく柔らかな笑顔を見せた。
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