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「推薦はされてねぇーが、前から気に入ってたんだよ! それにカルルカとは仲良いんだろ!? うちにくれば一緒に楽しくやれるぜ?」
急に矛先を変えて私に話しかけてくる。翡翠のようなつぶらな瞳が遠慮なく注がれた。短く切った明るい赤茶の髪の毛が、その言動と合わせて開放的な明るい性格を現していた。カルルカが言っていた、良い人でもないけど悪い人でもない、という言葉がなんとなく当たっているような気がする。
「どうだ? いいだろう? カルルカの友達ならみんな大歓迎だ! うちも戦力不足だしな」
「おっと。横入りはダメだとあれだけ言っておろう。ヴァレンタや。ギルドには礼節も重要。長たるお前がそんなだから、いつまで経っても二ツ星のままなのだよ。聞いとるぞ、みな燻っているらしいでの」
「うるせぇ! じじい!! 取ったもんがちなんだよ! いつまでも三ツ星のおこぼれもらってたって、面白くもなんともないだろうが!」
「ふむ。そういう考え方も、まあ、あるかもしれん」
「……あの。チェフ様。その理屈ならば、私達フグレイクが先に交渉権を得たと思うのですが?」
「はぁ。さすがはフグレイクの顔。屁理屈は通じんか。で、あるならば、老い先短い年寄り優先ということでーー」
なんなんだ。なんなんだ、この人達は! 人のことそっちのけで勝手にケンカを始めた。
ほら、クラスのみんなどうしたらいいのかわからなくて戸惑ってるし、ステラさんは面倒くさそうな顔で見てるし、カルルカはーーん? カルルカ?
地面に座り込んで何をしているかと覗き込んだら、カルルカは土いじりをしていた。あっ、違う、ゴーレム生成だ。暇すぎてミニゴーレムを作っている!
と、いうことは。これは当たり前なのか? 日常なのか? いつもこんな感じであーでもない、こーでもない、と?
いがみ合う3人の後ろから一斉にため息が聞こえた。
「あいつらいつもああだよな」「しゃーない。我が強い集まりなんだから」「フグレイクに、アンガンチュールに、グンヒルド。関わると大変だから放っとこうぜ」
あ、やっぱりいつもこうなんだ。というか、呆れられてしまっています。3人とも!
「もう、行こうぜ」「生徒も待ってるしな」
それでも言い合いを続ける3人を放っておいて、残りのギルドの人たちは勧誘を開始した。真っ先に注目が集まったのは、やっぱりアミーシャだ。でも。
「先ほどの戦いは素晴らーー」
「残念ながら、興味がないのです。お引き取りください」
みたいな感じでバッサリと断りまくっていた。仕方なく、みんな次の候補へと声をかけていく。それぞれが声を弾ませている中で、一人、眼鏡のメイズリーだけは誰にも声をかけられていない。
メイズリーは、うつむいてしまった。
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