プロローグ

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プロローグ

  (はる)か未来、古びた呼び方で40世紀初頭。 太平洋の真ん中で救難(きゅうなん)ポッドが1つ、 航海中のサルベージ(せん)に引き上げられた。 クレーンで引き上げられた丸型の鉄の塊からは、 今もなを救難信号(きゅうなんしんごう)(はっ)せられていた。 海洋法にもとずき救助されたポッドのハッチを、 船員が開いた時、腐った缶詰を開いた時のような 狂暴な()びた臭気(しゅうき)(あふ)れだしていた。 顔をしかめながらも船員が中を覗き込むと、 底には死体の(よう)に横たわる女性が1人いた。 「女性が1人いる。  これはダメだな」 そう言いながらも律儀(りちぎ)に中に入る船員。 同僚(どうりょう)がそれを見て咄嗟(とっさ)にたしなめた。 「酸欠(さんけつ)になるぞ。  もう少し待て!」 「大丈夫だって」 そう言って飛び込んだ同僚(どうりょう)を覗き込んだ船員が、 床で倒れた女性を(ひざ)に乗せている同僚にたずねた。 「どうだ?」 「ああ大丈夫だ。死んでるよ」 「あのな、お前」 「冗談だ。死んでるけど生きてる」 「どっちだよ!?」 「両方だ」 「ふざけてるのか!」 「いや、そうじゃない。  こいつはアンドロイドだ。  バッテリー切れだが、充電すれば多分生き返る」 「どうしてこんな所にアンドロイドが?」 「さあな。  それはこいつ聞けばいい。  もし生き返らなくても、  内臓されたデータチップを解析(かいせき)すれば、  どうしてここにいたのか(わか)(はず)だ」 「なるほどな。  どっちにしろ、それは俺達の仕事じゃない。  海洋保安局か特科(とっか)か何かが調べてくれるさ。  さっさと引き上げちまおうぜ!」 「だな」 だがこののち、 引き上げられた身元不明の漂流者は、 行方(ゆくえ)は知れない。    
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