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不安を一転させて、セシリアはそう、ころころと微笑んで、茶をすする。
「恐縮でございます。ですが、本心です」
女王にからかわれて、ヴォーグは赤くなって、真顔で答えた。その様子を見て セシリア、そしてセヲォンも声を合わせて笑う。茶会は、何百年にも及ぶ疫病の不穏な広がりを一刻でも忘れさせるかのごとく和やかに、長らく王宮の午後を彩った。
「罠を仕掛けてみようと思うんだ」
すっかり時刻は夜となり、ヴォーグが王宮を辞して宿舎に帰ろうとすると、セヲォンは送っていくと申し出、夜の帳のなか、ヴォーグとセヲォンはふたりきりで王宮の庭園を歩いていた。その時のことである。セヲォンはそう少し微笑みながらつぶやいた。
こいつ、それが言いたくて俺を送ると言い出したな。
ヴォーグは直ちにセヲォンの意図を察し、苦笑しながらランタンの光越しにセヲォンを見やった。
「あの義賊気取りの何奴かを、引っ捕らえるのか」
「そうだ。興味がある」
ほう、と一息ついてヴォーグはセヲォンをただす。
「大義名分はあるのか? 興味がある、だけでは軍は動かせんぞ」
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