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「村を解放するのは良いが、そのあと村人をたたっ斬ってしまうのは民心にも恐れを与え、よろしくないだろう。それに大々的に軍を動かすつもりはない。ごく少数の精鋭で十分だ」
「ほう」
「他人事のように言うなよ」
セヲォンは立ち止まってランタンを庭の縁石に置いた。ちょうど庭園の中程、噴水のある中庭までふたりは来ていた。ヴォーグも足を止め、またもセヲォンの言いたいことをその瞳のなかに認め、呆れたように言った。
「俺に参加しろと?」
「ちょうど軍も休暇だ。幼なじみのたっての願いに応じるのも一興ではないか」
「……ほう……他には誰が?」
「俺も参加する」
さらっと重要なことを微笑んだ顔のまま言いやがる。こいつはいつになっても変らんな。
ヴォーグはそう言い出したいのをこらえつつ、セヲォンに向き直った。
「王弟自ら出るというのか……! セシリアさまが何と言うか…」
「姉上には秘密だ、言うなよ」
ヴォーグはやれやれというように手を振り、噴水の脇に腰を下ろし言った。
「さては共犯に俺を仕立て上げるつもりだな……」
「よく分かっているじゃ無いか。それにお前も興味があるだろう、何者なのか」
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