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セヲォンは驚きのあまり思わず声を上げた。ヴォーグの剣の強さは王国で一二を争う。瞬間で相手とけりをつけるのを何回も目にしてきた。そのヴォーグと対等に戦っている。相手が女であると言うことよりも、セヲォンは何よりそれに驚愕し叫んだ。
「ヴォーグ、気をつけろ、強いぞ、そいつ!」
「わかって……いる!」
修羅場と化した宿屋の一室に緊張感が走る。当のヴォーグも驚きを禁じえなかった。
こいつ、俺の剣を防ぎやがった……それにもしてもなんて目をしてやがる、まるで獣か、いや、憎悪がそうさせているのか…? お前は何を憎んでいる? 俺では無い、その向こうの何を、睨み付けているのだ……?
ヴォーグの意識はついつい女の眼光に引きつけられる。
いかん! とヴォーグは剣先に意識を戻し、力を一気に込めた。宙にカァアァンンと剣がはじきとんだのは女の剣だった。
しかし女は引かない。今度は胸の短剣をかざしヴォーグを襲う。
が、そのとき、セヲォンが動いた。素早く女の背後に向かったセヲォンの剣が唸り、女の背中を突いた。たまらず、女は悲鳴を上げ、床に転がった。そして、動かなくなった。
「……死んだか?」
「いや、貫いてはいない」
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