第三章 セシリアの提案

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 エスターはその相手を見て全てを悟った。  自分の背中を剣でえぐった男、と最初に剣を合わせた男、そのふたりがそこにいた。自分はガザリアに囚われの身となったのか。  だが目をこらしてみればなにかが違う。男ふたりの装束は、テセ人のものだ。するとここはテセ、そして自分はこのテセ人ふたりに、まんまと計られたのだ……。  先ほどよりはっきりと、エスターの唇から乾いた笑いが漏れ出た。 「女、何が可笑しい」  ヴォーグはランタンの光をエスターの方に向け、そう尋ねた。エスターは近づいてくる黒髪の大男を眩しげに見つめ、次いで吐き出すように言った。 「……してやられたから。あんたたちふたりはテセ人だろう。ガザリア人の格好をして私をおびき寄せたんだな、やられたよ」 「よく理解しているじゃ無いか。なかなか頭の良い女だ」  そう言いながらもうひとりの金髪の男が近づいてきて、エスターの顔をのぞき込んだ。 「俺たちのことが分かってるなら、そろそろ、自分についても語ってもよかろう。女、お前は何者だ?」  エスターはセヲォンから目をそらし、名乗る代わりに、ふてくされたように呟いた。
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