第三章 セシリアの提案

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「俺としたことが、つい、だがな、我慢できなかったのだ、すまぬ」 「謝ることは無い。あの女の罪は重大だからな……わからぬことはない」 「いや……いや……それ以前に哀れで、いや……、俺も変わらぬ……」  先ほどの怒気はどこへやら、ヴォーグの言葉の末尾は消え入らんばかりであった。セヲォンは思わず聞き返した。 「……変わらない?」  ヴォーグは何も答えず、再び足早に大股で廊下を歩いていく。  カツン、カツンと石壁にこだましては遠ざかっていく靴音を聞きながら、セヲォンは意外な面持ちで友の背を見送った。  テセの女王、セシリアは弟からの報告を聞き、思わず長い吐息を吐いた。 「まさか、賊の正体はそんな人物だったとは」 「はい、私も意外でした」  セヲォンは真顔になってセシリアに問う。 「どうします? 姉上。無辜の民もエスターに殺されています。ましてや、ガザリア人の被害者も半端ない。このままでは民も納得しないでしょうし、何よりガザリアから引き渡せと要求されたら、拒否できません」  わかっている、とばかりにセシリアは頷く。
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