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満面の笑顔である。いまは双方国の要職につく身とはいえ、幼なじみ同士故の気安さが場を和ませた。ほどなく、3人は席を女王の私室に移し、茶を飲みながら、再会の喜びをひとしきり語り合うことにする。窓からの木漏れ日が温かい、心和む午後のひとときだった。
やがてヴォーグの国境勤務の話題が途切れたところで、セシリアが思い出したようにこう言った。
「……これで疫病を治す薬草さえ見つかれば、民も我らもこの数百年に渡る苦境を克服できるというものですが……」
途端に沈黙が茶席を支配する。
いったい、我々はあとどれだけ苦しめばいいのか。誰もが無言のうちに抱えている想いが3人のいつ尽きるともない会話を止めさせた。あわてて、セヲォンがそれを打破するかのようにセシリアに向き合った。
「姉上、薬草が見つかるまであと一歩ですよ。薬師たちからも、探索の者たちからも、あと決め手になる成分を持つ薬草が見つかれば、と報告を受けているではないですか」
「そうなのですが……先日探索に出した者から妙な噂を聞いたことは、お前も知っているでしょう?」
「妙な噂?」
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