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「それが……そうでもないのだ。村を解放したあと、その土地の長老に薬草について詰問し、答えられないと容赦なく斬ってしまうとか」
顔をしかめながらセヲォンはカップの縁をはじく。キイーンという澄んだ音が部屋に広がる。ヴォーグはあんぐりと口を開けた。
「……解放者にみえて、とんだ悪魔だな、そいつら……」
そこで、もっとセシリアはヴォーグを驚かす情報を呟いた。
「それが……大人数の賊で無く、たったひとりの賊らしいのです」
「……ひとり! ひとりでガザリア勢を蹴散らして村を解放するのか! 凄腕だな、そいつ」
ヴォーグは流石に呆れたと言わんばかりに茶を一気に飲み込み、感嘆した。
「何者なのでしょう…?」
セシリアはやや不安げにふたりに視線を投げた。
「いまのところ全く正体不明です。ただ確かなのは……」
「そいつも疫病を治癒する薬草を追っている、ということか」
ヴォーグが合点したとばかりに口を挟んだ。
「そのとおり」
「会ってみたいものだな。そいつに俺が殺されなければ、だが」
「国境警備隊の長、ヴォーグ殿がなにをおっしゃいます」
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