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第4クオーター。
ティップオフで、福岡第五の長身ガソルが飛ぶ。
「なべちゃん!」
倉野高校のセンター渡辺は身長186cmを誇るが、208cmのガソルの前では大人と子供のようにも見える。
渡辺の伸ばした手の遥か上をガソルの手が追い抜いていった。ガソルは余裕をもって司令塔の日本代表、三星へボールを送る。
ぴたり、と倉野高校のガード田中が三星につく。
「たなやん、低く!」
田中はたった160cmしかない身長を更に縮めて、三星の目を見た。三星は垂れた前髪の間から忙しなく両目を動かし、コート中を見ている。
と、三星の強烈なドライブが始まった。必死に田中が両手を広げて追う。三星の顔が3Pラインで構えるシューター如月へ向いた。
「外か!」
田中が必死に手を伸ばす。
如月をマークする倉野高校のシューター佐藤が、その動きに反応する。
「さとちゃん、頼む。カットだ」
精一杯に伸ばした田中の手が、如月へのパスコースを切った。佐藤がその限定されたパスコースを塞ぐ。
田中と佐藤の汗が飛び散る。
その熱量を蔑むかのように、茶色のボールは逆の方向へ唸りをあげた。三星のノールックパスがゴール下へ走り込んだエース市瀬に渡る。
「コバ! むらじゅん!」
高校通算得点記録を更新中の福岡第五エース市瀬。この大エースを倉野高校フォワードコンビ小林と村上がしっかりマークしていた。
三星の芸術的なパスが通ったが、市瀬の前に小林と村上が立ち塞がる。抜いてゴール下まで侵入するコースはない。
そう思われた。
市瀬が狼のような目をぎらつかせたかと思うと、小林と村上は雷に打たれたような感覚を覚えた。気づくと、二人の間を市瀬がすり抜けている。
……どこにそんな隙間が……。
音もなく、リングにボールが吸い込まれた。
あっという間だった。
食らいつく渡辺の頭の上から、ガソルのダンクが決まる。
佐藤が必死に伸ばした手をすり抜け、如月の3Pシュートが美しくネットを揺らす。
市瀬が三星からの浮き球を華麗に片手で受け取り、宙で翻りながらリングへねじ込む。
ピーーーー
『福岡第五高校、選手の交代です』
怒濤の攻撃が終わり、タイムがかかった。
スコアボードに100-43というスコアを刻んで、福岡第五のスターたちはベンチへ退いていった。
「強すぎ」
「後でサインもらおう」
「言うてる場合かよ」
「でも、あいつらとまだやりたいな」
「そだな」
「「「「「頑張りますか」」」」」
残り、9分。
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