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四人のスター選手がコートから消えた。
残り9分で点差は57点。ここからの逆転負けはありえない。
消耗の激しいバスケットボールでは、10分休むだけでも身体の状態は全く違ってくる。福岡第五がスター選手四人を休ませたのは当然だ。
だが、福岡第五が見せたその隙が、倉野高校の五人の特色と噛み合うこととなる。
ここから倉野高校が怒濤の反撃をみせる。
田中、小林、渡辺、佐藤、村上。
この五人は幼稚園からずっと一緒に過ごしてきた。
田んぼや野原ばかりで周りには何もない田舎町。五人は幼い頃からとにかく走り回った。
青臭い野花や佇む巨石を飛び越えながら、日が暮れるまで鬼ごっこをした。
「っしゃ、次、むらじゅんが鬼ー!」
「タッチー! はい、次なべちゃんが鬼っ!」
近所のおじいちゃんおばあちゃんの「早う帰りなぁ」という声が響く。それでも空が紫に染まるまで、五人は走り続けた。
中学に入ると、五人はバスケに出会った。こんな田舎町にカラオケやボーリングなんてものはない。
五人は幼い頃のように、今度は夜になっても走り続けた。毎日毎晩、五人でボールを追った。
五人のうち誰一人、超高校級の選手はいない。
では、何故この倉野高校がウインターカップに出場できたのか。
油断から、福岡第五は忘れていたのかもしれない。
五人に特別な技はない。
並外れた体格でもない。
だが、五人ともが、幼き頃から培った超高校級のスタミナを持っている。そこに、15年を共にしてきたテレパシーに通じるチームワークが乗っかっている。
それは、試合終盤に本領を発揮するのだ。
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