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ピッ
タイムアウトが取られていた。
タイムを取ったのは福岡第五だ。福岡第五の監督が腕を組み、渋い表情で控え選手たちに指示を送る。
「こんなことは言いたくないが、このままじゃ永遠に三星や市瀬に追いつけないぞ。時間を使え。得点できなくてもいい。24秒まるまる使え。いいな!」
はいっ!
控え選手たちは、小気味良い返事をしたものの、表情は浮かなかった。なにせ、相手が普通じゃない。
福岡第五のスローインから試合が再開される。渡ったボールに田中と村上がつく。
ダブルチーム。
しつこいディフェンスにたまらず苦し紛れのパスを出す。それを小林がかっさらった。
「コバ! そのままいけ!」
「ったり前!」
独走から綺麗なレイアップが決まる。
悔しそうに福岡第五の選手がまたスローインを始めようとするが、またも福岡第五の選手に田中と村上がつく。
たった3分そこらしか出ていない福岡第五の控え選手が汗を滲ませている。
やっと見つけたパスコースに、次は佐藤と渡辺がつく。そこに後ろから追いついてきた田中が隙をつき、またもボールをかっさらった。
「むらじゅん!」
田中の素早いパスから村上がジャンプシュートを決めた。
「こいつら……時間を遡ってやがるみたいだ」
福岡第五の控え選手たちが汗まみれの額を拭いた。対して、時間が経つごとに倉野の五人が元気になっていく。息を乱してすらいない。
何度攻めようとしても、うじゃうじゃと倉野の五人が湧いてくる。点差は更に詰まっていた。
ピッ
福岡第五の監督が短く息を吐いた。当初の予定と狂った苛立ちが表れている。
「もういい。三星、ガソル、市瀬、如月、出ろ。取られた分、取り返してこい」
福岡第五 102-75 倉野
「分かりました」
「こんなんじゃ三冠なんてできねえ」
「いくぞ」
「おう!」
日本屈指の四人が、再びコートに足を踏み入れる。
さあ。
残り、5分。
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