5HOOPS

8/11
前へ
/11ページ
次へ
 ガンッ  ガンッ  ガンガンガンッ  アリーナに音が戻っていた。メガホンを叩く音がアリーナを揺らしている。  それは、福岡第五だけに向けられるものではなかった。 「倉野すげえ」 「歴史的大逆転かも」  いつも外からクールなシュートを放つ如月は、こんなに汗をかいたのは久しぶりだった。  ガソルは、日本ならゴール下は無敵だと思っていた。ゴール下でやっとボールをもらえても、動く隙間すら与えられず、手打ちのシュートはリングに嫌われる。  市瀬は、今まで三星からのパスが来ないことはなかった。わざわざ三星にパスをもらいにいくなんて……。  三星は肩で息をしていた。五人が同時に攻めてくる。こんなバスケは小学校低学年以来だ。だが、強い。  福岡第五 110-99 倉野  時計は、残り1分を切った。  さすがに、五人も疲れていた。息が、乱れる。 「……はぁ、はあ。これ……俺ら……たぶん、だいぶ頑張ってるな」  渡辺が途切れながら言った。ガソルの高い打点めがけて飛び回ってきた。足が、震える。 「ぜはぁ、はあ。……あと、1分。やっちゃおうぜ。番狂わせ」  村上が膝に手をつく。  残り1分。11点差。  手が、届く。   「「「「「っし、番狂わせだ」」」」」  笑顔を見せる五人。  だが、一人の観客が気づいた。 「……倉野のポイントガード……今、太股の裏を触ってた」  佐藤、小林、村上、渡辺は気づいていなかった。  田中の浮かべた笑顔が少しだけ苦く染まっていたことを。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

70人が本棚に入れています
本棚に追加