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疾風怒濤。
1分を切っても、ボールが向かうところ、倉野の五人は走る。
それでも、福岡第五は高校屈指の技術でゴール前に運ぶ。待ち構えたガソルが飛び上がった。トドメか。
どりゃあ!
わっ。
会場が湧いた。
渡辺が小林の肩を借りてガソルより飛び上がる。ふた回り大きなガソルから渡辺が奪い取った。
既に蜘蛛の子を散らすように、倉野の四人が走っている。
「むらじゅん!」
「合点承知!」
スピードそのまま、村上がリングにひねり入れた。
9点差。
残り、48秒。
厳しい。
否、
可能。
スローインしようとする如月を五人で囲む。乱れた息と汗が混じる。
「出せ!」
三星が強引に寄ってボールを拾った。
君たちはよく頑張った。トドメを刺す。抜いてやる。
猛然と振り向いた三星は、振り向きざまに強い衝撃を受けた。目の前で田中がぶっ飛んでいる。
ピーーー! オフェンス!
三星のファウル。ここでまた、倉野ボールへ変わる。
「マジかよ」
市瀬は、そう呟いたことさえ、後悔した。目の前をボールが通りすぎる。倉野に休息など、ない。プレーはもう始まっている。
3Pラインで佐藤がシュートモーションに入った。
エリートなど、どこかへ吹き飛んだか。三星、如月、ガソル、市瀬、四人が獣のように佐藤へ向かって飛んだ。
「たなやん!」
佐藤が遠く反対側の3Pラインで構える田中を見つけた。
田中は小さな身体ごと放るように、リングへ曲線を描いた。
大歓声とともに、リングをボールがすり抜ける。
6点差。
残り、39秒。
観客が総立ちだ。
福岡第五の監督の怒鳴り声が飛んでいる。倉野ベンチで皆が抱き合っている。
奇跡が起きる。
そう、アリーナ全体が感じていた。
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