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その試合は、すでに第4クオーターに入っていた。
アリーナに入った観客のほとんどは、高校三冠に挑む福岡県代表の福岡第五高校を応援していた。チームカラーの深緑色がスタンドを埋め尽くしている。
華麗なプレーに黄色い声援が飛び、ド派手なプレーに地鳴りが起こる。
高校生ながら、オリンピック日本代表に名を連ねるポイントガードの三星。
その三星の芸術的なパスを華麗にリングへ入れる大会一の点取り屋、フォワードの市瀬。
身長208cmを誇り、派手なダンクを決めるスペインからの留学生、センターのガソル。
ハーフラインからも3Pシュートを沈める高校NO1シューターの如月。
スター選手だらけの福岡第五高校は、史上最強の高校バスケチームと呼び声高い。
冬の高校バスケ、ウインターカップ男子一回戦。
このスター軍団に挑むのは、岐阜県の倉野高校。田舎町からやってきた初出場の公立高校である。
第3クオーターを終え、
福岡第五 89-43 倉野
あとは第4クオーターの10分を残すのみ。
福岡第五の勝利は、この時すでに確定していたと言っていい。
だが、コートに立つ倉野高校の五人の目は、まだ死んでいなかった。
「強いな」
「当たり前。史上最強高校だぜ?」
「誰も俺たちが勝つなんて思ってねえな」
「そりゃそうだ。あと10分で46点差追いつくなんてありえねえ」
「そっか、あと10分でお別れだな、俺たち」
田中、小林、渡辺、佐藤、村上。
どこにでもいるような名前の倉野高校の五人。
福岡第五の選手たちとは、技術も体格もすべてに劣る五人。
その五人は第4クオーターのコートに立つ前に、互いに目を合わせて笑った。
「「「「「楽しもうぜ」」」」」
スポーツは、最後の最後まで何が起こるか分からない。
だから人は、スポーツに熱狂するのだ。
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