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◇◇◇
三ヶ月後ーー。
相変わらず透さんのマンションで暮らしている私は、今日訪ねてくるお客様のために焼いたクッキーをトレイに盛り付けていた。
お部屋は整えたけど、私も透さんも、今日は少し力の抜けた私服。
ゲストは約束より十五分ほど遅刻しており、透さんも「遅いな」とつぶやいた頃、ふたりが到着したとコンシェルジュさんから連絡が入った。
出迎えると、まずは元気いっぱいの美砂が抱きついてくる。
「お邪魔しまーす。久しぶり、沙穂ちゃん! 透くん!」
あまりの勢いにこちらは尻餅をつきそうになるが、うしろから透さんが支えてくれた。
そしてもうひとり。
「透! 沙穂さん! 久しぶりだね!」
葵さんだ。
彼は美砂ごと私に抱きつこうとするのだが、今度は透さんがそれを突き飛ばした。
「やめろ、葵」
「ちょ、透、骨が折れちゃうから」
壁に当たって跳ね返った葵さんは肩を押さえてプルプル震えてみせるが、透さんは涼しい顔で相手にしない。もう、いつもこうなんだから。仲がいいんだか、悪いんだか。
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